過去の安全標語を見てみれば、不安全行動という言葉がよく出てきます。
ここでは、安全標語のキーワードとして高い関心がある不安全行動についてご紹介します。
目次
不安全行動とは?
不安全行動というのは、労働者自身あるいは関係する労働者の安全を阻む可能性がある行動を意図して行うものです。
労力や手間、費用や時間を省略することを優先して、面倒である、この程度は問題ないだろう、他の人もやっているためいいだろう、早く作業をするには仕方がないなどというような思いや、長年やっているため心配ない、事故を自分が起こすことはないなどというような過信や慣れから、安全な行動ではなく安易な行動の結果、労働災害になることが多くあります。
なお、ヒューマンエラーというのは、労働者自身の行動が結果として意図しないものになることです。
労働災害が起きる要因とは?
労働災害が起きる要因としては、次のようなものが考えられます。
- 労働者の不安全行動
- 物や機械が事故の起きる状態、あるいは事故の起きる要因が作り出されている不安全状態
なお、厚生労働省では、次の12項目を労働者の不安全行動のパターンとして挙げています。
- 安全措置の不履行
- 防護・安全装置を無効にする
- 危険な状態を作る
- 不安全な状態を放置
- 運転中の機械・装置等の掃除、注油、修理、点検等
- 機械・装置等の指定外の使用
- 危険場所への接近
- 保護具、服装の欠陥
- その他の不安全な行為
- 誤った動作
- 運転の失敗(乗物)
- その他
また、厚生労働省では、次の8項目を物や機械の不安全状態として挙げています。
- 物自体の欠陥
- 物の置き方、作業場所の欠陥
- 防護措置・安全装置の欠陥
- 保護具・服装等の欠陥
- 部外的・自然的不安全な状態
- 作業環境の欠陥
- 作業方法の欠陥
- その他
労働災害が発生する要因としては、厚生労働省の平成22年の「労働災害原因要素の分析」によると次のようになっています。
- 労働者の不安全行動と物や機械の不安全状態によって発生した労働災害が約94.7%
- 労働者の不安全行動だけによって発生した労働災害が約1.7%
- 物や機械の不安全状態だけによって発生した労働災害が約2.9%
- 労働者の不安全行動でも物や機械の不安全状態でもなくて発生した労働災害が0.6%
このようなことから、労働災害が発生した要因の中で労働者の不安全行動によって発生したものが96.4%を占めています。
そのため、労働災害は、ほとんど労働者の不安全行動によって発生するといえるでしょう。
労働者の不安全行動によって発生する労働災害を防止するためには?
ここでは、労働者の不安全行動によって発生する労働災害を防止する方法についてご紹介します。
不安全行動が発生する要因としては、次のようなものなどがあります。
- 労働者
- 作業
- 作業環境
- 安全管理
- 組織
不安全行動が発生する要因は、このような要因の中の一つのみでなく、いくつかのものが絡んでいると考えられています。
また、労働災害が不安全行動によって発生するときは、労働者の意識、心構えのみで防止することはできません。
というのは、不安全行動が発生する要因が、監督・管理が徹底されていないことや、環境・設備面の不備によることも多くあるためです。
不安全行動は、作業のあるべき行動から逸れることですが、この作業のあるべき行動である作業手順(作業標準)がはっきりと決められていなかったり、決められていたとしても、安全教育が十分に実施されていなかったりしたので、不安全行動を労働者がしてしまって、労働災害が発生したケースもあります。
安全教育は、指導したつもりでも、指導したことが十分に労働者に伝わっていないと意味が全くありません。
普段の作業プロセスにおいて指導した内容を実践させ、不安全行動をしたときは是正をすぐにさせながら、作業のあるべき行動をマスターさせることが大切です。
不安全行動を防ぐためには、先にご紹介した12項目の労働者の不安全行動のパターンのそれぞれに関して、その対策を個別に検討する必要があります。
例えば、防護・安全装置を無効にする、安全措置の不履行に関しては、指導、教育、監督を徹底することによって対策することができますが、不安全状態を放置、危険な状態を作るに関しては、作業環境や設備の改善、さらに人間工学的な立場から気配りする対策が必要です。
また、職場におけるいい対人関係の構築、労働時間、休憩、休日などというような労働条件の適正化など、労務管理の立場からも対策する必要があります。
不安全な行動の内訳をヒントに
安全衛生情報センターでは、不安全な行動を分類しています。この分類を参考に安全標語を作成してみました。
■しっかりと 再度確認 安全装置
→
「安全装置をはずす,無効にする」を参考に作成しました。
面倒なのでという理由で、安全装置をはずして作業する方が多いようです。
事故防止のために、安全装置を必ず有効にしておきましょう。
■まず確認 安全装置の 調整を
→
「安全装置の調整を誤る」を参考に作成しました。
安全装置の理解不足のため、安全装置の調整を誤る人が多いようです。
事故防止のために、安全装置の事前確認をお願いいたします。
■安全と 笑顔を守る 防護物
→
「その他の防護物をなくす」を参考に作成しました。
面倒なのでという理由で、防護物をなくして作業する方が多いようです。
事故防止のために、防護物の重要性を理解し作業に取り掛かりましょう。
■不意の危険も 予測して 再度確認 安全装置
→
「不意の危険に対する措置の不履行」を参考に作成しました。
不意の危険に対する一瞬の処置が、生死をわけてしまいます。
事前に不意の危険を予測した行動を考えておきましょう。
■危険よぶ 不意の行動 再チェック
→
「機械,装置を不意に動かす」を参考に作成しました。
予期せぬ不意の行動は、周囲の人間に対して非常に危険です。
周囲の人間に配慮した行動を心がけましょう。
■危険がひそむ 車の移動 声はかけたか 再チェック
→
「合図,確認なしに車を動かす」を参考に作成しました。
車の移動は非常に高い危険を伴います。
周囲の人間に配慮し必ず確認の合図を心がけましょう。
■ちょっと待て 声はかけたか 再確認
→
「合図なしに物を動かす又は放す」を参考に作成しました。
自分のふとした行動が、周囲の人間に対しては非常に危険な行動であることがあります。
特に重たい物の移動の際には、声がけは必須です。
■動かした機械は「停止」が 離れる合図
→
「機械等を運転したまま離れる」を参考に作成しました。
機械を停止しないで離れると、思わぬ事故につながる可能性があります。
動かした機械は停止までが自分の責任という自覚で行動しましょう。
■危険です 一人ぼっちに した機械
→
「機械等を不安全な状態にして放置」を参考に作成しました。
機械を運転したまま不安全な状態にして離れると、思わず動作をして危険な状態になります。
動かした機械は必ず一人ぼっちにしないでスイッチを切るまで確認しましょう。
■不安定な工具は 不安と危険増す
→
「工具等を不安全な場所に置く」を参考に作成しました。
工具等を不安全な場所に置いて離れると、不安と同時に危険性が高まります。
工具の置き場所は安定した場所を意識しましょう。
■積み過ぎた 荷物は罪も 積んでいる
→
「荷等の積み過ぎ」を参考に作成しました。
荷物の積み過ぎにより、荷が不安定になり事故の危険性が高まります。
必ず適切な量の荷物をこころがけましょう。
■ちょっと待て! つり荷の下は 危険ゾーン
→
「つり荷の下に入り又は近づく」を参考に作成しました。
何かの拍子につり荷から荷物が落ちてしまうという危険性があります。
つり荷の下にはくれぐれも近づかないようにしましょう。
■落ち着いて 次の動作は 確認後
→
「確認しないで次の動作をする」を参考に作成しました。
工場や建築現場などでは次に起こる事象を予測した動作が必要です。
動作を行う場合は必ず、次の動作を確認しながら行いましょう。
■落ち着いて 工具はしっかり 手渡しで
→
「手渡しの代りに投げる」を参考に作成しました。
ちょっとした気の緩みから、近くの人に対して物を投げてしまうことが
大きな事故につながることがあります。
危険をなくすため確実に手渡しを実行しましょう。
■悪ふざけ 事故をよびこむ 危険源
→
「いたずら,悪ふざけ」を参考に作成しました。
工場や建築現場でのいたずらや悪ふざけは、言語道断です。
命の危険ととなりあわせであることを自覚し行動しましょう。
■持ちすぎた 荷物で事故も 抱えてる
→
「荷などの持ち過ぎ」を参考に作成しました。
時間短縮を理由に、荷物を持ちすぎる方も多くいるようです。
時間短縮が命の短縮につながってしまいますので荷物は適切な量を運びましょう。
■荷と安全 しっかりつかんで 事故防ぐ
→
「物のつかみ方が確実でない」を参考に作成しました。
不安定な荷のつかみ方は、危険を伴います。
荷物は必ず固定させてつかみましょう。
「不安全行動」の安全標語
あなたから 未来を奪う 不安全
(財)中小建設業特別教育協会 安全標語
https://www.tokubetu.or.jp/anzenposter/hyougo.html
仕事場は 油断一つで 不安全
(財)中小建設業特別教育協会 安全標語
https://www.tokubetu.or.jp/anzenposter/hyougo.html
習慣とは意識しない行動 不安全行動は習慣になる
(財)中小建設業特別教育協会 安全標語
https://www.tokubetu.or.jp/anzenposter/hyougo.html
重機発進 周囲見てから動き出そう 動きながらの確認は 不安全で事故のもと
2019年度 野村興産 株式会社 安全衛生標語
https://www.nomurakohsan.co.jp/2019/10/notice/4320